相続税の申告と納税は、被相続人の死亡を知った翌日から10か月以内に行う必要があります。期限を過ぎると加算税や延滞税が発生し、特例や控除の適用も受けられなくなるため、早めの準備と資金確保が欠かせません。本記事では、相続税の申告期限について解説し、間に合わないときの解決策もご紹介します。
相続税の申告期限は10か月以内
相続税の申告と納税は、被相続人(亡くなった人)の死亡を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。たとえば、2023年1月6日に亡くなった場合は、その翌日の1月7日から数えて、同年の11月6日が申告・納税の期限です。もし期限日が土日祝日に重なる場合には、税務署が休みのため、翌営業日が期限となります。相続税は「申告」と「納付」の期限が同じであるため、申告書の作成を進めながら、納税資金の準備も同時に進めなくてはなりません。
相続税は原則として現金一括納付
相続税は原則として現金一括納付が求められます。税額が大きくなりやすいことから、手元に現金が少ない場合には資金確保に苦労するケースも少なくありません。相続財産の大半が不動産という場合は、必要に応じて売却などの対応が必要になることもあります。現金一括の納付が難しいときは、後述する延納や物納の制度を検討することになるでしょう。
基礎控除額について
相続税の負担は「基礎控除額」によって大きく変わります。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算できます。たとえば相続人が3人なら基礎控除額は4,800万円となります。相続財産の合計額が基礎控除額を下回る場合、相続税の申告も納税も基本的には不要です。
法定相続人が多いほど控除枠が広がり、課税対象から外れる可能性が高まります。相続税の申告を行うにはさまざまな準備が必要です。
まずは遺言書の有無を確認し、相続人を確定します。遺言書がない場合には、相続財産や債務を調査したうえで、遺産分割協議を進めていきます。
遺産分割の合意が成立したら、その内容に基づいて相続税の申告書を作成し、財産評価を行い、税額を計算します。そして所轄税務署に申告書を提出し、納税まで済ませる必要があります。
申告に遅れたらペナルティがある?
「期限を過ぎてもとくに問題ない」と考えている方はいるかもしません。しかし、相続税の申告が期限に間に合わなければ、さまざまなデメリットやペナルティが生じます。相続税を軽減するための特例や控除が利用できない
まず、相続税の負担を抑えるための特例や控除の多くは申告期限内の手続きを前提としているため、期限に遅れることで利用できなくなる可能性があります。特に「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」は税負担を大きく引き下げてくれる制度ですが、これらは遺産分割が完了し、申告期限内に手続きを済ませておくことが条件となっています。期限を過ぎた段階では、これらの特例を適用できず、結果として本来なら大幅に軽減できた税額をそのまま負担しなければならない事態も起こりえます。
さらに税金が追加される・差し押さえのリスクがある
相続税の申告期限に遅れると「無申告加算税」、納税期限に遅れると「延滞税」の対象となります。申告していなければ納税はできません。そのため、これら2種類の追徴税が同時にかかってきます。無申告加算税は、原則として納付すべき税額のうち50万円までは15%、50万円を超える部分には20%が課されます。自主的に期限後申告を行った場合には税率が5%に軽減されるものの、期限を過ぎたことによる負担増は避けられません。
一方、延滞税は納税が遅れた日数と未納額に応じて増えていき、納期限の翌日から2か月以上経過すると税率が高くなる仕組みです。遅延期間が長くなるにつれて負担は大きくなり、財産が差し押さえられる恐れもあります。
督促を無視して未納状態が続けば、差し押さえた財産が公売にかけられ、売却代金が滞納額に充てられることになります。
連帯納付義務がある
相続税には連帯納付義務があり、相続人の誰かが納税を怠った場合には、ほかの相続人にも督促が及ぶ可能性があります。自分の分を納付していても、ほかの相続人の分まで請求されるリスクがあるため、相続人全員が期限を守ることが非常に重要です。相続税の申告期限に間に合わないときの対処法
申告期限が迫る中で遺産分割協議がまとまらなかったり、納税資金を用意できなかったりする場合でも、取れる対処法はいくつかあります。間に合いそうにないときは、次のような方法を試してみましょう。遺産分割が途中でもいったん申告を済ませる
遺産が未分割の状態でも、相続税の申告書を仮計算で作成し、期限内に申告と納税を済ませておけば、無申告加算税や延滞税の発生を避けることができます。ただし未分割のまま申告すると、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減は適用できないため、納税額が一時的に高くなります。しかし申告期限後3年以内に分割する旨の届出書を提出しておけば、遺産分割が完了後に相続税の申告をやり直し、特例を適用して税額を調整できます。
クレジットカードで納付
国税のクレジットカード納付はインターネットから24時間手続きができ、期限までに現金が用意できないときに有効です。ただし利用限度額を超えると決済できないことや、決済手数料が必要であることに注意が必要です。決済手数料は納付額に応じて増えるため、高額な相続税の支払いでは負担が大きくなることもあります。またクレジットカードの引き落とし日に残高不足が生じた場合には、遡って延滞税が発生する点にも気を配らなければなりません。
延納・物納
現金一括納付がどうしても難しいと判断した場合には、延納や物納の利用も検討できます。延納は担保を条件に相続税を分割払いにできる制度で、物納は不動産などの相続財産そのもので納税する方法です。ただしこれらの制度は要件が厳しく、誰でも利用できるわけではありません。延納や物納を希望する場合も、申告期限までに手続きを行わなければならず、利子税という追加負担が生じる点にも注意が必要です。