早めに動く!生前贈与を利用した相続準備

公開日:2025/12/24
生前贈与

終活というと遺言や葬儀を想像しがちですが、生前贈与も立派な終活のひとつです。相続税の軽減や相続トラブルの予防に大きな効果をもちます。ただし、生前贈与の方法によっては課税対象となることもあるため、制度を正しく理解し、効果的に活用することが欠かせません。本記事では、生前贈与のメリット、利用時の注意点をまとめて解説します。

生前贈与とは?早めに贈与を行うメリット

生前贈与とは、存命中に自分の財産を他者へ無償で譲ることです。不動産、預貯金、株式など財産の種類は問いません。生前贈与を活用すると、あらかじめ財産が相続財産から外れるため、相続税の課税対象や遺産分割協議の対象から除外されます(一部、例外あり)。財産を計画的に移転できるため、相続対策として広く利用されています。ここでは、生前贈与のメリットをご紹介します。

相続税対策になる

相続税は、相続開始時点の課税遺産総額から基礎控除額を差し引いた金額に対して課税されます。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出され、たとえば法定相続人が3人であれば4,800万円、ひとりの場合でも3,600万円まで非課税となります。生前贈与によって財産を徐々に減らしていけば、将来的に相続財産が基礎控除額以下となり、相続税が発生しない可能性もあります。また、贈与した財産が相続財産から除外される点も生前贈与が節税対策として有効な理由です。極端な事例では、全財産を生前に贈与すれば相続税をゼロにすることも理論上可能です。ただし、贈与から7年以内に相続が発生した場合、原則として相続財産として加算されるため注意しましょう。

節税効果の累積

贈与税には暦年課税制度があり、年間110万円までの贈与は非課税となります。毎年110万円以内で贈与を積み重ねれば、贈与税の負担を抑えつつ相続財産も計画的に減らすことができ、節税効果が累積します。

将来的な税制改正や評価額の上昇によるリスクを防げる

贈与はその年の税制で完結するため、将来的な税制改正による不利益を避けやすい点もメリットです。さらに、有価証券など評価額が将来上昇する可能性がある財産については、値上がり前に贈与することで相続時の税負担を軽減できます。仮に贈与後7年以内に相続が発生したとしても、持ち戻しの対象となるのは贈与時点の評価額であり、値上がり分が反映されないため、結果的に有利に働きます。

渡したい相手に確実に財産を渡せる

生前贈与は「誰に・どの財産を渡すか」を確実に反映できる手段です。相続時の遺言と異なり、本人が家族へ直接意向を説明し納得を得ながら財産を移転できるため、トラブルの抑止にもつながります。遺留分の問題が生じた場合でも請求されるのは侵害額相当の金銭であり、贈与財産自体が取り戻されることはありません。

直系卑属への贈与税非課税制度の活用もおすすめ

ここまで解説した暦年贈与を軸とした相続税対策は効果的ですが、あわせて検討したいのが直系尊属から直系卑属への贈与税非課税制度です。これらの制度はいずれも「目的が限定されている」「直系尊属から直系卑属への贈与である」「非課税枠に上限がある」といった共通点を持ちます。とくに、子や孫へ資金支援をしつつ実質的に相続税対策を進めたい場合に有効です。また、教育資金や結婚・子育て資金の制度では、贈与された金銭を信託銀行などの金融機関に預け、専用口座で管理する仕組みが取られています。これにより、贈与額が実際に教育費や子育て費用として支出されたかどうかを金融機関が確認するため、名義預金とみなされるリスクを避けることができます。

教育資金の一括贈与

教育資金の一括贈与は、受贈者ひとりにつき1,500万円(学校等以外への支払いは500万円)まで非課税となる制度で、受贈者が30歳未満かつ前年所得1,000万円以下であることが要件です。なお、受贈者が30歳になった時点で在学していない、あるいは贈与者が死亡したといった場合で教育資金として未使用の残額がある場合には、その残額に贈与税または相続税が課されることがあります。

結婚・子育て資金の一括贈与

結婚・子育て資金の一括贈与も類似した仕組みで、受贈者ひとりにつき1,000万円(うち結婚関係費用は300万円まで)を非課税とする制度です。受贈者は18歳以上50歳未満、前年所得1,000万円以下が要件です。50歳到達時点で未使用の残額が残っていたり、贈与者が死亡した場合などには、教育資金制度と同様、残額が課税対象となる点には注意が必要です。

住宅取得等資金の一括贈与

住宅取得等資金の贈与は、住宅の新築、取得、増改築などを目的とする贈与を対象とした制度で、省エネ等住宅なら1,000万円、それ以外の住宅なら500万円まで非課税となります。受贈者は18歳以上で、贈与を受けた年の所得が2,000万円以下(一定の住宅要件を満たす場合は1,000万円以下)であることが条件です。ほかの制度と異なり、贈与資金を翌年3月15日までに住宅取得等のために全額充てること、その後遅滞なく居住する予定であることなど、細かな要件が定められているため、利用時は制度内容の精査が欠かせません。

生前贈与を行う際の注意点

生前贈与には多くのメリットがありますが、運用の仕方によっては思わぬ課税や相続トラブルを招くことがあるので注意しましょう。

贈与の内容を明確にする

贈与は贈与者の一方的な意向では成立せず「あげる」「もらう」という双方の意思表示が揃って初めて贈与と認められます。たとえば親が子名義の口座を勝手に作り、子がその存在を知らない場合には、形式上の名義が子であっても実質的に親の財産であると判断され、相続税の対象になる可能性があります。

名義預金とみなされないためには、贈与契約書を毎年作成し、贈与の内容を明確に残すことが重要です。

遺留分侵害額請求に関するリスク

生前贈与は遺言よりもトラブルを抑えやすい側面がありますが、特定の相続人に偏った贈与を行うと、ほかの相続人が遺留分侵害額請求を行う可能性があります。その場合、受贈者が金銭負担を負うことになるため、贈与のバランスには慎重な判断が求められます。

老後の生活費や介護費用が不足しないよう気をつける

節税対策として生前贈与を積極的に行った結果、想定より長生きしたり予期せぬ支出が増えたりすると、老後資金が枯渇する可能性もあります。子や孫のために贈与したものの、暮らしが苦しくなり、逆に金銭的支援を求めるような事態は避けなければなりません。

生前贈与は必ず老後の生活設計とセットで考え、無理のない範囲で計画的に進めることが不可欠です。

まとめ

生前贈与は時間をかけて計画的に進めるほど効果的です。生前贈与で財産を減らしておけば、その分だけ相続財産が少なくなり、相続税を軽減できます。贈与の内容を明確にし、遺留分侵害額請求に関するリスクや老後の生活費や介護費用が不足するリスクに備える必要がありますが、節税、資産移転、家族間調整のいずれの面でも、早めの取り組みが大きなメリットにつながります。

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