遺産分割協議は、遺産相続時のトラブルを防ぐために行われます。遺された人々が故人を穏やかに見送るためにも大切な時間です。また、協議で決定したことを記録し、相続人の権利を証明するために遺産分割協議書の作成は欠かせません。今回は、遺産分割協議と書類の作成の方法についてご紹介します。
遺産分割協議とは?
遺産分割協議とは、相続人たちが被相続人(亡くなった人)の財産をどのように分けるか話し合う場を指します。遺言書がある場合は原則として遺言書の内容が優先されますが、遺言書に記載されていない財産があったり、相続人全員が協議に合意して別の方法で分けたい場合に遺産分割協議を行うのです。たとえば、不動産は長男、預金は次男が取得するなどといった場合がこれに該当します。そして、この合意内容を対外的に証明するため、協議で決まった内容を文字として残し、相続人全員が署名し、実印を押した書類が「遺産分割協議書」になります。
書式に決まりはありませんが、法的な効力をもつ重要な書類であり、不動産の名義変更や預金の払い戻し、株式の名義変更など、多くの相続手続きで提出を求められます。遺産分割協議書は通常、相続人全員が同じ内容のものを1通ずつ保管します。
遺産分割協議は、相続人全員の参加と全員の合意がなければ成立しないうえ、いったん作成した協議書は、相続人ひとりの意向で変更することもできません。内容を変える場合は改めて相続人全員で協議し直す必要があります。
また、一度成立した遺産分割協議をやり直すと、贈与税や所得税が発生する場合があるため、作成時は慎重な判断が求められます。なお、すべての財産についてひとつの遺産分割協議書で完結させる必要はありません。
分割内容が先に決まった財産がある場合には、その財産のみ記載した「一部分割協議書」を作成することも可能です。
遺産分割協議書の作り方
遺産分割協議と遺産分割協議書作成の流れは、次の4つのステップで行われます。ステップ1:相続人を確定させる
遺産分割協議書を作成するには、まず相続人を確定させることが必要です。遺産分割協議には民法で定められた相続人全員の参加が不可欠ですので、被相続人の戸籍を出生から死亡まで遡って確認し、子どもや養子、認知された子どもなど、すべての相続人を把握します。この過程で漏れがあると協議自体が無効となる可能性があるため、慎重に確認することが求められます。
ステップ2:被相続人の財産を確定
次に、被相続人の財産を確定させます。財産には現金、預貯金、不動産、株式やその他の有価証券、車などの動産、さらに借入金やローンといった負債も含まれます。すべての財産を把握したうえで、財産目録を作成しておくと協議がスムーズに進みます。また、遺産分割協議の前に、遺言書の有無を確認することも忘れてはいけません。遺言書が存在する場合にはその内容が優先されるため、後から発覚すると協議のやり直しが必要になり、トラブルの原因となることがあります。
ステップ3:遺産分割協議
相続人と財産が確定したら、実際に遺産分割協議を行います。話し合いでは、各相続人の意見や希望を尊重しながら、財産の分割方法や割合を決めます。遠方に住んでいたり仕事の都合で直接参加できない相続人がいる場合には、電話やオンラインで意思を確認することも可能です。相続税の申告期限は相続開始から10か月以内と定められているため、協議に時間をかけすぎると期限に間に合わない可能性があります。
合意にいたらない場合には家庭裁判所での調停や審判を利用することもあります。
ステップ4:書類作成
合意内容が決まったら、遺産分割協議書に記載します。書式の指定はありませんが、被相続人の氏名と死亡日、相続人全員が協議内容に合意している旨、相続財産の具体的な情報、相続人全員の氏名・住所・実印の押印、各相続人の印鑑証明書の添付は必ず行います。財産の記載方法は細かすぎると不都合が生じる場合もあります。たとえば預金の残高を正確に記載しても利息がつくことで金額が変わると、当該財産と認められないこともあります。
不動産については登記簿と記載内容が一致しているかを必ず確認しましょう。相続人が未成年の場合は法定代理人または特別代理人を立て、その代理人の実印押印と印鑑証明書が必要です。専門家に相談しながら作成することで、後々のトラブルを避けやすくなります。
遺産分割協議書はどんなシーンで必要になる?
先述したとおり、遺産分割協議書はどのようなシーンで必要になるのでしょうか。相続するにあたり、遺産分割協議書が必要になる手続きをまとめました。遺産分割協議書が必要なシーンとは
手続きによっては不要な場合もありますが、銀行での預金名義変更や払い戻し、証券会社での株式名義変更、法務局での不動産名義変更、運輸支局での自動車名義変更、税務署での相続税申告など、多くの相続手続きにおいて遺産分割協議書の提出が求められます。ちなみに、相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内と決められていますが、名義変更の期限(不動産以外)はとくに決まっていません。しかし、名義変更を長く放置している間に相続人が亡くなり、さらに相続が発生すると手続きがより複雑化してしまうので、放置するのはやめておきましょう。
遺産分割協議書が不要なケースもある
相続人がひとりしかいないときや遺言書どおりに遺産分割を行う場合、遺産分割協議書は必ずしも必要ではありません。しかし、遺言書に記載されていない財産が後日発見される可能性もあるため、トラブル回避の観点から作成しておくこともあります。とくに不動産の相続登記は令和6年4月1日以降、相続開始から3年以内の登記が義務化されており、できるだけ早く手続きを進めることが重要です。それ以前の相続も、3年の猶予期間が設けられていますが、義務化されています。